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税務

「事業用ですね、では免税にはできません」が言えなくなる ― 11月1日から、免税店が代わりに見るべきもの

2026-08-14/池田 信明

免税店を営んでいると、「これ、うちの店で売るからまとめて欲しい」と言われる場面があります。海外で小売をやっている方が、仕入れのつもりで来店するケースです。

現行制度では、ここで免税販売はできません。免税の対象は「通常生活の用に供する物品」に限られていて、事業用・販売用として購入されることが明らかな物品は対象から外れているからです。断る理由がはっきりしているので、対応としては迷いにくい場面でした。

この前提が、令和8年(2026年)11月1日に変わります。用途を見る要件そのものが無くなるためです。ただし「だから事業用でも自由に免税で売れる」という話ではなく、見るべきポイントが用途から別のものに移ります。この記事では、何が入れ替わるのか、そして量の多い相手にどう対応する道があるのかを、国税庁の公表資料をもとに整理します。

この記事の前提

  • 2026年8月14日時点で公表されている情報に基づいています
  • 令和8年10月31日までを「現行制度」、11月1日以降を「リファンド方式」と書き分けます
  • リファンド方式そのものの流れ(税込で販売し、出国確認後に返金する)は以前の記事で書いています

現行制度 ― 用途で線を引いている

現在、免税販売の対象になるのは「輸出するために購入される物品のうち、通常生活の用に供する物品」です(消費税法施行令18条2項)。国税庁のQ&Aは、この範囲から外れるものをはっきり書いています。

事業用又は販売用として購入されることが明らかな物品は、通常生活の用に供する物品に該当しないため、免税対象物品に含まれません(免税購入対象者が国外に所在する事業者の代理として、このような物品を購入する場合も同様です。)

「外国人事業者に対して免税販売することはできますか」という問いにも、対象にならない旨が明記されています。本人が買う場合だけでなく、国外の事業者の代理として買う場合も同じとされている点が、実務では効いていました。

該当するかどうかは、販売場を経営する事業者が総合勘案して判定することとされ、Q&Aは判断材料を5つ挙げています。反復継続的な購入や携帯して持ち帰るのが困難な数量、配送先に国内の住所・事業所が指定されていないか、旅券とは別名義のクレジットカードでの決済、継続的な事前注文や掛け売り・振込みでの決済、そのほか事業用・販売用と見込まれる事情、の5点です。

11月1日から ― 用途要件が廃止される

リファンド方式では、この判断がまるごと不要になります。国税庁のQ&A(リファンド方式)は次のように書いています。

輸出物品販売場で免税対象物品を販売する際、現在要件とされている「通常生活の用に供するもの」であるか否かの判断は不要となるため、免税対象外の物品に該当しないものは、免税対象物品に該当します

免税対象外として残るのは、金及び白金の地金並びに金貨及び白金貨と、消費税が非課税とされる物品だけです(消費税法8条1項、消費税法施行規則6条)。国税庁の資料でも「用途要件の廃止」と図示されています。

あわせて、一般物品と消耗品の区分も廃止されます。整理すると次のとおりです。

現行制度(〜R8.10.31) リファンド方式(R8.11.1〜)
一般物品/消耗品の区分 あり 廃止
購入下限額(税抜) 一般物品5千円以上、消耗品5千円以上 区分せず5千円以上
消耗品の購入上限額 1日50万円以下 廃止
用途要件 通常生活の用に供する物品に限る 廃止(用途を問わない)
消耗品の特殊包装 必要 廃止

代わりに前に出るのは「持ち出せる数量か」

では事業用の大量購入が通るのかというと、そうはなりません。同じQ&Aに、まさにその質問が立てられています。

問7 出国時に所持して持ち出す(輸出する)ことがおよそ困難である数量の物品の購入であるなど、免税購入対象者が事業用や販売用として購入すると見込まれる場合であっても、輸出物品販売場制度による免税の適用対象となりますか。

【答】免税対象物品以外の物品でなければ、その用途を問わず免税対象物品となりますが、免税購入対象者が、出国時に免税対象物品を所持していない場合には、その物品を持ち出す(輸出する)ことにつき税関の確認を受けることはできません。そのため、輸出物品販売場で免税購入対象者が購入する免税対象物品は、出国時にその免税対象物品の全てを免税購入対象者自らが所持して持ち出す(輸出する)ことができる数量に限られることになります

理屈はこうです。リファンド方式では、購入者が出国時に現物を税関に見せて確認を受けます。手元に無ければ確認は受けられません。そして確認が取れなかったときは、販売した免税店の側で免税の適用を受けられません(消費税法8条1項)。

つまり店側から見ると、判断の軸がこう入れ替わります。

  • 〜10月31日:用途を見る。事業用・販売用と分かれば対象外
  • 11月1日〜:数量を見る。本人が持って出られる量を超えていれば、確認が取れず免税が成立しない

なお、確認は購入日から90日以内の出国時に受けるものとされ、販売から90日を超えても税関確認情報が提供されない場合は、課税販売(課税売上げ)が確定します。

ここで一つ、店側にとって安心できる設計があります。リファンド方式の返金は、税関確認情報を取得した後に行う流れになっています。確認が取れてから返すという順序を守っている限り、確認が取れなかった取引はそのまま課税売上げとして残るだけで、返金だけしてしまう事態にはなりません。

量が多いなら、そもそも別の条文を使う

ここからが実務で使える部分です。国税庁は問7の末尾で、大量購入への答えを自分から示しています。

なお、免税購入対象者が輸出物品販売場で運送契約を締結し、その販売場で免税対象物品を運送事業者へ引き渡す方法(いわゆる直送制度)や、輸出物品販売場を経営する事業者自らが購入者の指定する場所(国外)へ輸出する方法を採ることで、消費税法第7条の規定による輸出免税制度の適用を受けることができます

免税店の制度(8条)ではなく、通常の輸出免税(7条)を使う、という整理です。2つのルートを並べます。

直送制度 事業者自らが輸出
根拠 消法7①一、消規5①三 消法7②、消規5①一・二
運ぶ人 顧客が国際第二種貨物利用運送事業者と運送契約を締結し、その場で引渡し 事業者自らが顧客の指定する国外の場所へ輸出
荷送人(差出人) 顧客 事業者
保存書類 運送契約書等(輸出許可書の保存は不要) 輸出許可書、または郵便物の引受証等
免税店の許可 不要(販売場は輸出物品販売場に限らない) 不要(同左)
相手方 免税購入対象者に限らない(居住者でも可) 同左
購入記録情報の提供 不要 不要
5千円の下限判定 不要 不要
出国時の税関確認 不要 不要

見落とされやすいのは下から数えた4行です。免税店の許可を持っていなくても使えますし、相手が外国人旅行者である必要もありません。 直送制度は居住者に対しても適用を受けられる、と明記されています。免税店の話として読んでいると気づきませんが、これは輸出をしている一般の事業者にも関係する話です。

事業者自らが輸出する場合の保存書類は、輸出の形態で分かれます。

  • 輸出許可を受ける貨物:輸出許可書(税関長が証明した書類)
  • 価額20万円超の資産を郵便物として輸出:輸出許可書(税関長が証明した書類)
  • 価額20万円以下の資産を郵便物として輸出:小包郵便物・EMS郵便物なら日本郵便から交付を受けた引受けを証する書類および発送伝票等の控え、通常郵便物なら引受けを証する書類(品名並びに品名ごとの数量及び価額を追記したもの)

直送制度で保存する運送契約書等には、次の記載が必要です(消規5①三、消基通7-2-23(2))。

  1. 顧客の氏名又は名称
  2. 運送契約を締結した年月日
  3. 資産の品名並びに品名ごとの数量及び価額
  4. 資産の仕向地
  5. 国際第二種貨物利用運送事業者の氏名又は名称及び住所等

保存期間は、譲渡を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です(消法7②、消規5①)。

現金で受け取るなら、書類がもう1枚要る

どちらのルートでも、共通して注意が要る点があります。代金を現金、または支払いが取引相手からのものであることが明らかでない方法で受領する場合、上記の書類に加えて、その商品に係る「仕向国における輸入許可書に相当する書類」の保存が必要とされています(消規5①三、①一・二)。

現金等以外の決済手段(クレジットカードなど)で決済する場合、この書類の保存は不要です。代金の受け取り方で必要書類が変わるということなので、店頭で現金決済を受けているなら、ここは決済方法とセットで運用を決めておく必要があります。

よくある誤解

Q. 用途要件が無くなるなら、転売目的だと分かっていても免税で売って構わないのでしょうか。

免税対象物品には該当します。ただし本文のとおり、持ち出せる数量という制約と出国時の税関確認は残ります。加えて、税関の確認を受けた物品が輸出されないこととなった場合は税関が購入者から消費税を徴収することとされ、正当な理由なく遅滞なく輸出しなかった場合は罰則の適用対象とされています。国内側にも、免税店で消費税が免除された物品であることを知りながら行った課税仕入れは仕入税額控除の適用を受けられないという手当てがあります(令和6年4月1日以後に行う課税仕入れから適用)。買い取る側の制限は続いている、という理解になります。

Q. 荷物が多いので、EMSで先に送ってから出国してもらう形にできますか。

その形では免税の適用を受けられません。いわゆる別送の取扱いは令和7年3月31日をもって廃止されており、出国時に現物を所持していない場合、輸出したことを証する書類を提示しても税関の確認を受けることはできないとされています。送る必要があるなら、別送ではなく上記の直送制度を使う、という切り分けになります。

Q. 当店は免税店の許可を取っていません。海外の取引先に免税で売る方法はありませんか。

免税店の許可は消費税法8条の制度を使うためのものです。7条の輸出免税は別の条文なので、直送制度や自ら輸出する方法であれば、許可の有無にかかわらず適用の対象になります。要件は許可ではなく、書類を保存していることの側にあります。

準備しておくこと

11月1日をまたいで、店頭での説明と社内ルールを揃えておくのが現実的です。

  1. 接客の分岐を数量に切り替える。10月31日までは「事業用・販売用か」、11月1日以降は「出国時にご自身で持ち出せる量か」。スタッフへの説明もこの順で入れ替える
  2. 量が多い相手の受け皿を先に決めておく。直送制度か、自社で輸出するか。直送制度なら、国際第二種貨物利用運送事業者との段取りを事前に確認しておく
  3. 運送契約書等の様式を用意する。上記5項目が漏れなく入る形にしておく。取引のたびに項目を埋める運用だと抜けます
  4. 決済方法とセットで書類を決める。現金等での受領なら、仕向国の輸入許可書に相当する書類まで回収できるか。見込みが立たないなら、決済方法の側を先に決める
  5. 返金は税関確認情報を取得してからという順序を、オペレーションとして固定する

用途で断っていた頃と比べると、11月以降は「断る」より「どの制度に載せ替えるか」を考える場面が増えます。7条のルートは免税店の許可を前提にしないので、これまで免税販売と縁がなかった事業者にとっても選択肢になります。制度の切り替えは11月1日午前0時に一斉に起きるため、10月31日までの譲渡と11月1日以降の譲渡のどちらで処理するかは早めに整理しておくと安心です。個別のケースについては、詳細を個別にご相談ください。

参考(一次情報)

#輸出物品販売場#免税店#消費税#リファンド方式#輸出免税

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