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税務

免税店の消費税、いったん「課税売上」で受け取る ― 2026年11月「リファンド方式」で変わる経理と資金繰り

2026-08-03/池田 信明

店舗を運営していて外国人旅行者向けに免税販売をしている事業者から、最近「今の免税の仕組みが変わるらしいけど、何が変わるのか分からない」という相談を受けることが増えました。令和7年度税制改正で決まった「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」のことで、2026年11月1日から実施されます。

現行制度に慣れている事業者ほど、「免税店の許可があるから自動的に対応できる」と考えがちですが、実際には販売フローそのものが変わり、経理処理も一段階増えます。移行期間は設けられていないため、10月31日までは現行方式、11月1日午前0時を過ぎた瞬間にすべての免税取引がリファンド方式に切り替わります。この記事では、制度の変更点と、事業者が今から準備すべきことを整理します。

何が変わるのか:「その場で免税」から「立て替えて後で返金」へ

現行制度は、外国人旅行者等の免税購入対象者がパスポートを提示し、その場で消費税抜きの価格で購入できる「即時免税方式」です。事業者にとっては、免税販売であればその時点で消費税を受け取らずに済みます。

リファンド方式では、この流れが次のように変わります。

  1. 購入時:購入者は消費税込みの通常価格で商品を購入する(免税店側は課税売上として処理)
  2. 事業者の説明義務:購入日から90日以内に出国時の税関確認が必要なこと、物品の提示義務があること、期限内に確認が取れなければ消費税を徴収されることを説明する
  3. 出国時:購入者は購入日の翌日から起算して90日以内に、空海港の免税手続用端末にパスポートを提示し、税関の確認を受ける
  4. 確認後:税関の確認情報が免税販売管理システムを通じて事業者に共有され、事業者は消費税相当額を購入者に返金する

つまり、免税店は一度「消費税込みの代金」を受け取り、税関確認が取れてから返金するという、いったん立て替える形の処理になります(国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」)。

現行方式とリファンド方式の比較

項目 現行方式(〜2026年10月31日) リファンド方式(2026年11月1日〜)
購入時の価格 消費税抜き(即時免税) 消費税込み(通常価格)
消費税の返金 発生しない 出国確認後に事業者が返金
出国確認 パスポート提示・書類貼付が中心 免税手続用端末での税関確認が必須
確認期限 明確な日数制限は運用上の目安 購入日の翌日から90日以内
事業者の経理処理 免税売上として1回で完結 課税売上で計上→確認後に免税売上へ振替
未確認だった場合 課税取引として確定(消費税を徴収)

経理処理は「一度課税、あとで免税に振替」の二段階になる

実務上いちばんつまずきやすいのがここです。リファンド方式では、販売時点ではまだ「免税が確定していない」扱いになるため、通常の課税売上として仕訳を起こし、税関確認が取れた時点で免税売上に振り替える処理が必要になります。国税庁の「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」(令和7年4月)にも、この振替処理の具体的な仕訳例が示されています。

例えば10,000円(消費税1,000円)の商品を販売した場合、イメージは次のようになります。

①販売時

  • 借方:現預金 11,000円
  • 貸方:売上(課税)10,000円、仮受消費税 1,000円

②税関確認が取れたとき

  • 借方:売上(課税)10,000円
  • 貸方:売上(免税)10,000円
  • 借方:仮受消費税 1,000円
  • 貸方:未払金(返金予定額)1,000円

③返金時

  • 借方:未払金 1,000円
  • 貸方:現預金 1,000円

取引のたびにこの振替を行うのは事務負担が大きいため、月次など一定のタイミングでまとめて振り替える運用も認められています。課税期間をまたいで確認情報が届いた場合は、継続処理を前提に、確認が取れた課税期間で調整する扱いになります。

90日以内に税関確認が取れなかった場合は、免税に振り替えず課税取引のまま確定させます。返金もしません。つまり「返金しなければ事業者が損をする」わけではなく、むしろ返金しない分だけ手元に残る形になりますが、その代わり消費税の納税義務が生じる点は変わりません。

課税期間を短縮している輸出事業者は要注意:「還付」が「納税」に変わることがある

免税店を含む輸出関連の事業者には、消費税の課税期間を1ヶ月に短縮する届出(消費税法9条ではなく19条の課税期間短縮の特例)を出しているところが少なくありません。輸出免税の売上は0%課税(免税売上)である一方、仕入や経費には通常どおり消費税がかかるため、輸出比率が高い事業者は構造的に還付ポジションになりやすく、その還付を早く受け取るために課税期間をあえて短くしているケースです。

ここにリファンド方式特有の落とし穴があります。国税庁のQ&Aには、販売した課税期間と税関確認が取れた課税期間がずれた場合の仕訳例が示されています。

X1期 販売時    :現預金 11,000 / 売上(課)10,000、仮受消費税 1,000
X1期 申告・納税時:仮受消費税 1,000 / 現預金 1,000 ← ここで一旦納税する
X2期 確認情報保存時:売上(課)10,000 / 売上(免)10,000
              仮受消費税 1,000 / 未払金 1,000
X2期 返金時    :未払金 1,000 / 現預金 1,000

つまり、免税売上への振替は税関確認が取れた課税期間で行うのが原則で、販売した期の申告を遡って訂正することはできません。販売した課税期間の時点では、まだ課税売上として申告・納税してしまうということです。

1ヶ月ごとに課税期間を区切っている事業者は、このタイムラグの影響を受けやすくなります。

  • 毎月、その月に販売した分は課税売上として計上・納税の対象になる一方、免税への振替(税額を減らす効果)は税関確認が取れた月にしか反映されない
  • 出国確認は購入日から90日以内に行われればよいため、月末近くに購入した客や滞在の長い客ほど、確認が翌月・翌々月にずれ込みやすい
  • その結果、「その月の新規課税計上額」が「過去の販売分の免税振替額」を上回る月は、還付額が縮小する、あるいは還付から納税に転じる可能性がある

特に影響が大きいのは制度が始まった直後(2026年11月〜)です。それまでは「免税振替待ちの販売」がまだ存在しないため、11月・12月あたりは新規の課税計上だけが先行し、免税への振替がほとんど追いつかない構造になります。

もう一つ、恒久的な影響もあります。90日以内に税関確認が取れなかった販売は、免税に振り替わらず課税売上のまま確定します。これは現行の即時免税方式にはなかった「取りこぼし」で、金額自体は小さくても、確認が取れない販売が一定割合ある限り、構造的に納税額を底上げする方向に働きます。

課税期間を1ヶ月に短縮して還付を受けている輸出関連事業者は、2026年11月・12月の資金繰りに一時的な影響が出る可能性を織り込んでおくことをおすすめします。

事業者が今から準備すべき3つのこと

1. 免税販売管理システム・レジ(POS)の対応確認

リファンド方式では、購入記録情報と税関の確認情報を免税販売管理システム(国税庁)でやり取りする仕組みが前提になります。POSレジや免税手続代行サービスを利用している場合、ベンダー側がAPI仕様の更新に対応しているかを確認する必要があります。自社でシステムを組んでいる場合は、対応スケジュールを早めに確認しておいたほうが安全です。

2. 返金方法の選定とオペレーション設計

返金方法は事業者ごとに、銀行振込・クレジットカードへの返金・決済アプリ経由の送金・出国空港内での現金返金などから選ぶ形になります。どの方法を選ぶかで、手数料負担、返金までのリードタイム、店舗スタッフの追加対応工数が変わってきます。自社で全て対応するほか、承認送受信事業者に返金業務を委託する選択肢もあるため、店舗規模に応じて検討が必要です。

3. 許可の確認と新様式での申請

現行の輸出物品販売場の許可を持っているからといって、自動的にリファンド方式に対応した扱いになるわけではありません。新様式の許可申請書は2026年10月1日から受付が開始される予定です。11月1日時点で切れ目なく免税販売を続けたい場合は、10月中の早い段階で所轄税務署に相談し、申請のタイミングを確認しておくことをおすすめします。

よくある誤解

誤解1:越境ECの輸出免税と同じ制度だと思っている

私の顧問先にも越境EC事業者が多いのですが、ここは混同しやすいポイントです。今回のリファンド方式は、店舗で外国人旅行者に対面販売する際の「輸出物品販売場制度」の話であり、海外の顧客に直接発送する越境ECの輸出免税(消費税法基本通達などに基づく通常の輸出免税)とは別の制度です。越境ECだけを行っていて実店舗を持たない事業者は、今回の改正の直接的な対象にはなりません。

誤解2:一部の商品だけ現行方式のまま残せる

移行に経過措置や併用期間は設けられていません。11月1日以降に行う免税対象物品の販売はすべてリファンド方式で処理する必要があります。「値の張る商品だけ先に現行方式で捌いておく」といった対応はできない点に注意してください。

まとめ

  • 2026年11月1日から、免税店の消費税処理は「即時免税」から「購入時は課税、出国確認後に返金」のリファンド方式に切り替わる
  • 経理処理は、販売時に課税売上として計上し、税関確認後に免税売上へ振り替える二段階になる。国税庁のQ&Aに具体的な仕訳例が示されている
  • 出国確認の期限は購入日の翌日から90日以内。期限内に確認が取れなければ課税取引のまま確定する
  • 免税への振替は税関確認が取れた課税期間で行うのが原則で、販売した期の申告は遡って訂正しない。課税期間を1ヶ月に短縮している輸出事業者は、このタイムラグにより従来の還付が縮小・納税に転じる可能性がある(特に制度開始直後の2026年11月・12月)
  • 事業者は、免税販売管理システム・POSの対応、返金方法の選定、新様式(2026年10月1日受付開始)での許可申請の3点を早めに準備する必要がある
  • 越境ECの輸出免税とは別の制度である点、経過措置がなく11月1日で一斉切り替えになる点を混同しないよう注意する

具体的な経理処理や、既存の許可の切り替え手続きの要否は店舗の状況によって異なりますので、詳細は個別にご相談ください。

参考(一次情報)

#消費税#輸出物品販売場#免税店#インバウンド

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