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税務

輸出許可通知書の「輸出者」は、自社の名前になっていますか ― 発送代行に任せた分だけ消費税の還付が通らない理由

2026-08-20/池田 信明

越境ECで海外に売った売上には消費税がかからない(輸出免税)。国内でかかった消費税は戻ってくる(還付)。ここまでは、輸出をやっている会社ならたいてい知っています。

つまずくのはその先です。実務で還付が認められなかった話を聞くと、原因は「海外に売っていなかった」ことではありません。海外に送った事実はあるのに、書類に書かれている名前が自社ではなかった、というケースが目立ちます。

発送代行や輸出代行に物流を任せていると、税関への輸出の申告(通関)をその会社の名前で行い、返ってくる書類の「輸出者」欄にもその会社の名前が載ることがあります。荷物は間違いなく自社の商品で、代金も自社が受け取っている。それでも書類の上では、輸出した事業者が別の会社になっている状態です。

この記事の結論を先に3行で:

  • 消費税が免除されるのは「海外に送った」からではなく、送った事業者が自社だと書類で証明できたときです(消費税法7条2項)
  • 名義が代行業者になっていても、国税庁が示している手続きを踏めば自社が免税を受けられます。ただし相手方の協力が要ります
  • ただし、代行業者にいったん国内で売っている形(=そもそも自社が輸出したことにならない売り方)になっていると、その手続きでは救えません

先に1つだけ確認してください。 直近の輸出案件の書類を1枚開いて、「輸出者」の欄が自社名になっているかを見てください。自社名になっていれば、この記事はもう読まなくて大丈夫です。 違っていた場合だけ、この先が関係します。

その書類は「輸出許可通知書」です

先に呼び名を揃えておきます。税関に輸出を申告して許可が下りると、税関から書類が返ってきます。紙の時代の呼び名は「輸出許可書」で、いまは電子申告なので 「輸出許可通知書」 という名前でデータ(PDF)として届きます。条文の言葉では「輸出の許可があったことを証する書類」です。この記事では以下、輸出許可通知書で統一します。

自社で通関している会社なら、通関業者からのメールに添付されて届いているはずの書類です。発送代行にまとめて任せている場合は、そもそも自社に届いていないことがあります。

免税の条件は「輸出したこと」ではなく「書類が揃っていること」

消費税法7条1項1号は、日本からの輸出として行われる資産の譲渡(売却など)について消費税を免除すると定めています。ただし同条2項に、次の一文があります。

前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。

条文の言い回しは硬いのですが、要するに「証明がされていなければ、免除しない」ということです。免税は、輸出した事実だけで自動的に付いてくるものではなく、決められた書類を整理して保存していることが条件になっています。

その書類の中身を決めているのが消費税法施行規則5条1項です。税関に申告して許可を受ける荷物であれば、保存するのは輸出許可通知書で、そこに次の4つが書かれているものに限られます。

施行規則5条1項1号 書かれているべきこと
その荷物を輸出した事業者の名前と所在地(条文の言葉では「氏名又は名称及び住所若しくは居所又は事務所等の所在地」。以下これを「住所等」と呼びます)
いつ輸出したか
品名と、品名ごとの数量・金額
どこの国に送ったか(仕向地)

問題になるのはイです。条文が求めているのは「輸出した事業者の名前」であって、「荷物の持ち主の名前」でも「代金を受け取った人の名前」でもありません。輸出許可通知書に代行業者の名前しか出てこない状態は、条文の求める書類が自社の手元にない状態に見えてしまう、ということです。

保存期間は7年間です。数え始めは、その売上を計上した事業年度(消費税では「課税期間」といいます)の終わりから2か月たった日です。なお、データのまま保存することも、それを印刷した紙(きちんと読める状態で出力したもの)を保存することも、どちらも条文上認められています(施行規則5条4項〜6項)。

名義が代行業者でも、自社が免税を受けられる道はある

ここが本題です。国税庁は質疑応答事例「輸出取引に係る輸出免税の適用者」で、輸出申告の名義人と実際に輸出取引を行った者(実際の輸出者)が違う場合の取扱いを示しています。回答要旨はこうです。

実際の輸出者及び名義貸しに係る友好商社等は、次の措置を講ずることを条件に、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者が輸出免税制度の適用を受けることができるものとします。

言葉を2つだけ補います。「友好商社」は昔の言い回しで、ここでは名前を貸した側の会社(つまり発送代行)のことだと読んでください。「名義貸し」も悪いことをした人向けの言葉に聞こえますが、税法上の言い方です。物流を任せた結果として申告の名前が代行業者になっている、という普通の状態も含みます。

条件は、両者が次のことをやることです。

実際の輸出者(=自社)がやること

  1. 税関に出した申告と、返ってきた許可の書類そのもの(コピーではなく元のデータ)を、自社で預かって保存する(条文の言葉では「輸出申告書等の原本を保存する」)
  2. 名前を貸した会社に対して、その会社には輸出免税の適用がない旨を伝える書類(消費税輸出免税不適用連絡一覧表)を渡す
  3. 名前を貸した会社に対して、その取引はその会社の帳簿の付け方がどうであれ、税法上その会社の売上げ・仕入れにはならないことを伝える

名前を貸した会社(=代行業者)にやってもらうこと

  • 確定申告書を出すときに、所轄の税務署へ、自社から受け取った上記2の書類の写しを提出してもらう(その課税期間に輸出免税をまったく使っていない場合を除く)

2の「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」は、国税庁のページに書式(別紙様式)が載っています。中身はシンプルで、宛先・日付・「下記の輸出取引については当社が消費税法第7条(輸出免税等)の適用を受けることとなるので、貴社にはその適用がないことを連絡します」という一文・輸出免税適用者名(取引責任者名)と、次の4列の表だけです。

書く内容
海外客先 実際に売った相手(海外のバイヤー)
取引年月日 その輸出取引の日付
輸出金額 その取引の金額
Invoice No. 海外向けの送り状の番号。どの荷物が自社の分かを特定するための欄(日本の「インボイス制度」の登録番号とは別物です)

代行業者は複数の荷主の荷物をまとめて申告していることがあるので、Invoice No. の欄が実質的にいちばん重要です。ここが空欄だと、表を渡しても「そのうちどれが御社の分ですか」に答えられません。

なお、質疑応答事例には注書きがあります。

名義貸しに係る手数料は、実際の輸出者に対する課税資産の譲渡等に係る対価であり、これについて輸出免税の対象とすることはできない

代行業者に払う手数料のほうは、輸出に関係する支払いであっても免税ではなく、消費税がかかる取引(課税仕入れ)として処理する、という意味です。「輸出だから全部免税」で処理していないか、あわせて確認しておくところです。

3つのパターンに分けて考える

自社のケースがどこに当たるかで、やることが変わります。

パターン 実態 輸出免税を受けるのは 自社がやること
A 海外のバイヤーに自社が直接売り、輸出許可通知書の輸出者も自社 自社 輸出許可通知書を7年保存する。追加の手続きは不要
B 海外のバイヤーに自社が直接売っているが、税関への申告は代行業者の名前 自社(上記の手続きが条件) 元のデータをもらう/一覧表を作って渡す/代行業者に伝える
C 自社は国内で代行業者に売り、代行業者が自分の商品として輸出している 代行業者 自社の売上は消費税がかかる売上(10%)として処理する

Cを見落とさないでください。消費税法基本通達7-2-2は、輸出免税が受けられる取引は法7条1項各号などに限られるとしたうえで、「輸出取引を行う事業者に対して行う国内での資産の譲渡等」には適用がないと明示しています。国内で相手に引き渡し、相手が自分の名前で輸出しているのであれば、自社の売上は普通の国内売上です。

BとCの分かれ目は、書類の名前ではなく誰と誰の間で売買が成立しているかです。次のあたりで判断が分かれます。

  • 請求書の宛先は、海外のバイヤーか、代行業者か
  • 代金を払ってくるのは誰か。代行業者が立て替えて入金しているだけか、代行業者が買主として払っているか
  • 商品が売れ残ったときの損を、最終的にどちらが被るか
  • 代行業者に払っているのは「手数料」か、それとも自社が受け取る「仕入代金との差額」か

契約書の題名が「発送代行契約」でも、中身が買取りになっていることはあります。判断に迷う内容であれば、契約書と請求書を持って個別にご相談ください。

具体例:年商6,000万円のうち2,400万円が代行業者名義だったケース

輸出中心のEC事業者C社を例にします。数字は説明のための仮のものです。

  • 年間の輸出売上6,000万円。自社ECと海外モールの両方で販売
  • うち2,400万円分は発送代行D社に物流をまとめて任せており、輸出許可通知書の輸出者はD社の名前
  • 販売相手はいずれも海外のバイヤーで、請求も入金も自社が直接受けている(=上のパターンB)
  • 国内の仕入・外注・広告などにかかった消費税は年間380万円。輸出売上ばかりなので、これがほぼそのまま還付になっていた

D社名義の2,400万円について、元のデータももらっておらず、一覧表も渡していなかったとします。この2,400万円が輸出免税として認められなかった場合の影響は、次のように見積もれます。

項目 金額 内訳
認められなかった売上 2,400万円 受け取った代金は税込として扱われる
増える消費税 約218万円 2,400万円 × 10/110
還付額 380万円 → 約162万円 差額が218万円

この計算は、税率10%の商品を前提にしています。食料品など軽減税率8%の対象を輸出している場合は、10/110ではなく8/108で計算します。

見落とされがちなのは、仕入れ側で引ける金額はほとんど変わらないことです。輸出免税の売上も、消費税がかかる売上も、どちらも「仕入れで払った消費税をどれだけ差し引けるかを決める割合」(課税売上割合)の計算に同じように入ります。免税から課税に振り替わっても、この割合が大きく動くことはありません。減るのは売上側の218万円で、その分がまるごと還付額から落ちます。

※ 厳密には、免税の売上は受け取った金額がそのまま入るのに対し、消費税がかかる売上は税抜きの金額で入ります。そのため、家賃収入など消費税のかからない売上がある会社では、この割合がわずかに下がり、引ける金額も少し減ることがあります。

この表は桁を掴むためのものです。実際には、申告額が少なかったことへの罰金分と、納付が遅れた期間分の利息(過少申告加算税・延滞税)も乗りますし、事案ごとに前提が変わるので、そのまま自分のケースに当てはめないでください。

C社が取るべき手は、金額を計算することではありません。D社に連絡して、元のデータを回してもらえるか、一覧表を受け取ってもらえるかを確認することです。「うちは対応していません」と言われた場合は、契約の見直しまで含めて検討することになります。

よくある誤解

「海外に発送した記録は全部残っているから大丈夫」

条文の作りが「書類を整理し、保存することにより証明がされたものとする」なので、保存そのものが条件になっています。追跡番号や配送完了の記録で輸出の事実を説明できることと、条件を満たしていることは別の話です。

「PDFで共有してもらっているから、元のデータは代行業者が持っていればいい」

質疑応答事例が求めているのは、自社が元のデータを保存することです。データも書類に含まれるので、紙である必要はありません(施行規則5条4項)。ただし「相手が持っている」状態は、自社が保存している状態ではありません。通関のシステム(NACCS)から出てくる輸出許可通知書のデータを、自社の管理下に移してもらう依頼が要ります。

「郵便で送っている分は関係ない」

郵便で送った場合に保存するのは、郵便局が「この荷物を受け付けました」と出す控え(引受けを証する書類)などです。ここに載るのは差し出した人、つまり発送代行に任せていれば代行業者の名前になります。名義の問題は、税関を通す荷物だけの話ではありません(金額が20万円を超える郵便物は、税関長が証明した書類のほうになります)。

Q&A

Q. 代行業者に一覧表の話をしたら、嫌がられました。

相手にも手間が発生する話なので、反応が分かれるところです。まず伝えてほしいのは、「国税庁が示している手続きで、この取引は御社の売上・仕入にはならないという整理です」という一言です。この手続きは代行業者にとって不利なものではなく、むしろ「うちの輸出免税ではありません」と整理できる材料になります。交渉が難しい場合は、依頼の文面を税理士側で作ることもできます。

Q. 過去の分もさかのぼって直せますか。

過去の分について何ができるかは、申告の状況や経過した期間によって変わります。まず確認したいのは、元のデータと一覧表を今から揃えられるかです。代行業者が廃業していたり、取引が終わっていたりすると、そもそも書類を作れないことがあります。過去分の取扱いは個別の事情で変わるので、まとめてご相談ください。

Q. 消費税の計算方法によっては関係ありませんか。

仕入れで払った消費税を実額で集計せず、売上から決まった割合で計算する方式(簡易課税)を選んでいる場合、還付という意味では関係が薄くなります。この方式では、輸出が多くても還付にはなりません。自社がこれに当たるかは、消費税の申告書を作っている人に「うちは簡易課税ですか」と聞けば分かります。なお、免税かどうかは納める税額の計算にそのまま効くので、区分そのものは変わらず重要です。

明日からできる確認

1. 輸出許可通知書を1枚開いて、「輸出者」の名前を見る

会計ソフトには入っていない書類です。自社で通関している場合は、通関業者からのメールの添付を探してください。発送代行に任せている場合は、そもそも自社に届いていないことが多いので、代行業者に「輸出許可通知書を送ってください」と依頼するところからになります。

ここが自社名なら、以下は不要です。

2. 違っていたら、その荷物を誰に売ったのかを請求書で確認する

宛先が海外のバイヤーならパターンB、代行業者ならパターンCの可能性があります。

3. パターンBなら、次の3つを順にやる

  • 自社で一覧表を作る。 書式は国税庁のページの「別紙様式」からダウンロードできます。Invoice No. を必ず入れて、どの荷物が自社の分かを特定できるようにします
  • 代行業者に渡す。 あわせて、輸出許可通知書の元のデータを自社に回してもらう依頼もします
  • 代行業者に、確定申告のときにその写しを税務署へ出してもらう。 ここは相手の作業なので、依頼して合意を取っておきます

4. あわせて確認しておくこと

  • 代行業者に払っている手数料を、免税ではなく消費税がかかる取引として処理しているか
  • 郵便で送っている分について、郵便局の控えの差出人が誰になっているか

輸出免税は、売上が伸びるほど落としたときの影響も大きくなります。まずは輸出許可通知書を1枚開いて、名前を見るところから始めてください。自社がどのパターンに当たるか判断しづらい場合は、契約書と請求書をお持ちのうえ、個別にご相談ください。

参考(一次情報)

#輸出免税#消費税還付#越境EC#発送代行#輸出許可通知書

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