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税務

売上を隠すと、いくら取られるのか ― 1,000万円で試算した追徴の総額と、見つかる経路

2026-08-19/池田 信明

顧問先からの相談で、年に何度か出てくる質問があります。「これ、売上に入れなかったらどうなるんですか」。

聞いてくる方の多くは、実行するつもりで聞いていません。金額の感覚を知りたいだけです。ところが調べても「重加算税は35%です」で終わっている記事が多く、35%が何に対する35%なのかが分からない。これでは判断材料になりません。

そこで、税込1,100万円の売上を1年分だけ抜いたケースで、実際にいくら払うことになるかを計算しました。

この記事の結論を先に3行で:

  • 1,100万円隠すと、会社だけで約645万円出ていきます。社長個人への課税は別途
  • 重い35%より、寝かせた時間のほうがじわじわ効きます。隠した場合だけ延滞税のブレーキが外れるからです
  • 税務署から連絡が来た時点で、いちばん軽い選択肢はもう消えています

1,100万円隠すと、会社だけで約645万円

前提は、会社が税込1,100万円の売上を計上せず、3年後の税務調査で見つかり、意図的に隠したと判断されたケースです。

項目 金額 内訳
消費税の追徴 100万円 税抜1,000万円 × 10%
法人税などの追徴 300万円 1,000万円 × 約30%(法人税・住民税・事業税の合計負担率)
重加算税 140万円 もともと払うべきだった税金400万円 × 35%
延滞税(約3年分) 約105万円 同じく400万円に対する概算
合計 約645万円

隠した1,100万円のうち、6割近くが出ていきます。しかもこれは会社の分だけで、この後に社長個人への課税が乗ります。

なお、この表は桁を掴むためのものです。税率も延滞税の期間も事案ごとに動くので、そのまま自分のケースに当てはめないでください。

じわじわ効くのは、35%より寝かせた時間のほう

重加算税の35%は一度きりの負担です。実際に効いてくるのは、むしろ延滞税のほうです。

普通は、期限内に申告書を出していれば、申告期限から1年を過ぎた期間は延滞税の計算から外れます。調査が長引いたぶんまで納税者に負担させないための決まりです(国税通則法61条)。

ところが、この決まりには例外があります。意図的に隠した場合には適用されません(法律の言葉では「偽りその他不正の行為」といいます)。つまり隠したときだけ、このブレーキが外れます。3年寝かせれば3年分、7年なら7年分がまるごと乗ってきます。

延滞税の割合は毎年変わります。令和8年(2026年)分の割合は、納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以降が年9.1%。7年分ともなると、もとの税金とほとんど変わらない額になります。

さかのぼられる期間そのものも伸びます。税務署があとから税額を直せる期間は原則5年ですが、意図的に隠していた場合は7年です(同法70条5項)。しかもこの7年は、隠した部分だけでなくその年の所得全体が対象になります。

会社で終わりません。同じお金に、社長個人でも税金がかかります

実務でいちばん効くのは、ここです。

会社から抜いた売上を社長個人が使っていた場合、そのお金は「社長への賞与」とみなされます(認定賞与)。役員へのボーナスは、事前に決めた金額を毎月同額で払うなどの条件を満たさない限り、会社の経費になりません。

つまり、会社の利益は減らないまま、同じ金額が社長個人の給与としても課税されることになります。1,000万円を隠したはずが、会社でも個人でも取られる二重取りの構造です。

さらに、給与である以上は源泉徴収のし忘れとして会社が納付義務を負い、これにも加算税がつきます。

加えて、帳簿に隠した記録があると、青色申告の承認が取り消される場合があります(法人税法127条1項3号)。赤字を翌期以降に繰り越す控除も使えなくなるので、影響はその年で終わりません。

越境ECだと、どこから見つかるのか

「自分の口座までは見られていない」と考えている方が多いのですが、実際には外から見える経路がいくつもあります。

  • 海外送金の記録 … 1回100万円を超える海外への送金・海外からの入金は、金融機関から税務署へ調書が出ます。銀行だけでなく、PayPal や Wise のような送金サービスも対象です
  • 販売プラットフォームへの照会 … Amazon・eBay・Shopee などの販売実績は、税務署からの照会で確認できます。ネット取引を専門に扱う調査部門も置かれています
  • 海外口座の情報交換(CRS) … 各国の税務当局のあいだで、非居住者の口座情報が自動的にやり取りされる仕組みです。海外に置いておけば見えない、という前提はもう成り立ちません
  • 取引先への確認(反面調査) … 仕入先・外注先・配送業者の帳簿に、こちらの取引が残っています
  • 内部からの通報 … 経理担当者や元従業員からのものが実際にあります

売上を抜く作業は、自社の帳簿を触るだけでは終わりません。相手のある取引ほど、あとから消せない記録が外に残ります。

「二重帳簿を作らなければセーフ」は誤解です

よくある誤解が、「領収書の書き換えや架空名義みたいなことをしていなければ、重加算税にはならない」というものです。

最高裁の平成7年4月28日判決(いわゆる「つまみ申告」事件)は、この理解をはっきり否定しています。正しい帳簿がありながら、そこから一部の金額だけをつまんで少なく申告し続けていた事案で、最高裁は、架空名義を使ったり資料を隠したりといった積極的な工作までは必要ないとしました。最初から少なく申告するつもりで、その意図が外から見て取れる行動をしていれば、それで足りるという判断です。

この考え方は今も生きています。入金口座を1つだけ申告から外す、調査で事実と違う説明をする、税理士に一部の資料を渡さない。この程度でも該当しうるということです。何も作らなかったことが、隠したと評価される余地があります。

同じ漏れでも、早く動くほど安く済みます

金額が同じでも、いつ動いたかで負担が変わります。少なく申告していた場合は次のとおりです。

動いたタイミング 上乗せされる税(過少申告加算税)
調査の連絡が来る前に、自分から修正申告 かからない
連絡が来た後〜調査で指摘される前 5%(※)
指摘された後、または税務署から更正 10%(※)
意図的に隠したと判断された場合 35%(重加算税)

※ もともと申告していた税額と50万円の、どちらか多いほうを超える部分は、それぞれ10%・15%になります。 また、過去5年以内に同じことで重加算税などを課されていた場合、35%は45%に上がります。

そもそも申告していなかった場合も同じ形です。調査の連絡前に自分から申告すれば5%、連絡後は10〜25%、指摘後は15〜30%(税額300万円超の部分)と上がっていき、意図的に隠したと判断されれば40%です。

ここから読み取れるのは、税務署から連絡が来た時点で、いちばん軽い選択肢はすでに消えているということです。「見つかってから考える」は、選べる手を1つ捨ててから考えることになります。

よくある誤解

Q. 少額なら調査は来ないのでは? 金額の大小だけで決まるものではありません。申告内容が同業種の平均から離れていれば、規模にかかわらず確認の対象になり得ます。越境ECは、プラットフォーム側に取引記録が丸ごと残るという点で、現金商売より痕跡が濃く残ります。

Q. 7年より前の分は時効ですか? 税額を直すことはできなくなりますが、会社の赤字(繰越欠損金)については、発生した年までさかのぼって確認できるよう10年の期間が設けられています。「7年経てば全部消える」わけではありません。

Q. 後から気づいた場合、黙っていたほうが安全ですか? 逆です。調査の連絡が来る前に自分から修正申告すれば、上乗せの税はかかりません。放置しているあいだも延滞税は積み上がり続けます。動くのが早いほど安く終わります。

数字で比べてから決めてください

1,100万円を隠すと、会社の段階で約645万円。社長個人への課税を含めればさらに増えます。加えて青色申告の取消しと、7年さかのぼられうる状態が続きます。

同じ金額を、使える制度を全部使って正面から圧縮したほうが、手取りは多く、7年分の不安もありません。少なくとも、比べてから決める価値はあります。

心当たりのある年があるなら、調査の連絡が来る前に、修正申告できるかどうかを確認しておくことをおすすめします。連絡が来てからでは、いちばん軽い選択肢が使えません。

なお、この記事は制度の大枠を説明したものです。実際にいくらになるか、どの年が対象になるかは事実関係によって変わりますので、判断の前に個別にご相談ください。

参考(一次情報)

#重加算税#税務調査#延滞税#越境EC#消費税

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