税金をRPGにしてみた ― ブラウザで遊べる「ゼイキンクエスト」を作りました
税金の説明は、たいてい読まれません。制度としては正確で、丁寧で、無料で公開されている解説がいくらでもあるのに、多くの人は最後まで読まないまま「まあ何とかなるか」で閉じてしまう。これは読む人が悪いのではなく、税金という題材が「必要になるまで自分の話だと思えない」性質を持っているからだと思っています。
そこで、読むのではなく遊ぶ形にしてみました。ブラウザで動く、昔ながらのコマンド式RPGです。
▶ ゼイキンクエスト 〜控除をもとめて〜(インストール不要・スマホ対応)
どんなゲームか
やることは単純です。「たたかう」を選ぶと税金の3択クイズが出て、正解すれば敵にダメージ、間違えれば攻撃をしくじる。それだけです。
ただ、ひとつだけルールを決めました。正解でも不正解でも、必ず解説を出す。ここがこのゲームの本体です。クイズは解説を読ませるための入口で、戦闘はその解説を最後まで読ませるための仕掛けにすぎません。
エリアは5つあり、進むにつれて分野が変わります。
| エリア | 扱う分野 |
|---|---|
| ショトクのくさはら | 所得税、医療費控除、ふるさと納税 |
| ショウヒゼイのどうくつ | 消費税、インボイス、簡易課税 |
| ネンチョウのとう | 源泉徴収、年末調整、住民税 |
| ホウジンゼイのしろ | 法人税、減価償却、簿記の基礎 |
| マオウのやかた | 青色申告、相続・贈与、電子帳簿保存法 |
最後に「カクテイシンコク大魔王」を倒すと、間違えた問題だけを集めた復習シートが出ます。全80問、通しで20〜30分ほどです。レベルアップも、呪文も、宿屋も道具屋もあります。呪文の名前は「ケイヒ」「コウジョ」「アオイロ」「イータックス」です。
「負けても進める」を最優先にした
作っていて一番時間をかけたのが、実はゲームバランスでした。
最初のバージョンは、正答率100%で遊んでも3割しかクリアできない難易度になっていました。ボスが硬すぎたのです。これを何百回もシミュレーションして数値を調整し、最終的には次の形に落ち着きました。
- 正答率80%なら、ほぼ全滅せずにクリアできる
- 正答率50%でも、数回全滅しながら最後までたどり着ける
- 全滅しても経験値の半分は残り、宿の主人が回復アイテムをくれる
最後の一点が重要でした。知識で勝つゲームである以上、知らない人ほど負けます。そこで負けを「進めない理由」にしてしまうと、一番学んでほしい人が最初のエリアで詰んでしまう。負けても必ず前に進める設計にしたのは、ゲームとしての親切さというより、学習コンテンツとしての必要条件だったと思っています。
税制改正は、こういうところで牙をむく
作り終えてから気づいたことがあります。ゲームの中に、すでに古くなった数字が入っていました。
少額減価償却資産の特例です。「取得価額30万円未満なら全額経費」という、実務でも頻出の論点。ところがこれは令和8年度税制改正で40万円未満に引き上げられており、2026年4月1日以後に取得した資産から新基準が適用されています。私自身、この改正について別の記事を書いた直後だったにもかかわらず、ゲームの問題文は旧基準のままでした。
同じように、青色申告特別控除も見直しが必要でした。最高65万円は令和8年分としては正しいのですが、令和8年度改正により令和9年分からは最高75万円(e-Taxと優良な電子帳簿の両方が要件)になります。しかも書面申告の55万円区分は廃止され、10万円に下がります。
コンテンツを作って公開するというのは、こういう「賞味期限」を抱え込むということです。記事なら日付を見て読者が判断してくれますが、ゲームの問題文は正解として提示される分、古いと余計にたちが悪い。タイトル画面に「2026年7月時点の制度にもとづく」と明記したうえで、改正のたびに手を入れていくつもりです。
技術的な話
サイト本体はNext.jsで作っていますが、このゲームはHTMLファイル1枚です。React化していません。
- ドット絵のモンスターは、16×16のテキストデータからSVGで描画。パレットを差し替えるだけで色違いの敵が増やせる
- 効果音はWeb Audio APIで生成。音声ファイルは1つも使っていない
- セーブはlocalStorage
- 外部ライブラリはゼロ
出題の順番にも少し手を入れました。単純にランダムで選ぶと、同じ問題が数問おきに戻ってきて一気に興ざめします。そこで「直近8問は出さない」「出題回数が少ないものを優先」「同じ回数なら過去に間違えた問題を優先」という順で選ぶようにしました。結果として、1エリアの16問はひととおり出てから2巡目に入り、間違えた問題だけが自然と多めに回ってきます。繰り返しを消すのではなく、復習に変えるほうが学習コンテンツとしては正しいはずです。
public/ に置いてrewriteで /zeikin-quest に割り当てているだけなので、サイト本体のCSSとぶつかりません。今後クエストや問題を足していくときも、このファイルを差し替えてpushするだけで済みます。個人開発でありがちな「フレームワークに合わせて作り直す」を避けたかった、というのが正直なところです。
これから足したいもの
まだRPGとしては素朴なので、少しずつ育てていく予定です。仲間キャラクター、装備品、隠しダンジョン(相続税編を考えています)、そしてさらなる問題の追加。
おことわり
このゲームの内容は、2026年7月時点の制度にもとづく一般的な説明です。税制は毎年変わりますし、実際の取り扱いは個別の事情によって変わります。遊んで「そういえばこれ、うちはどうなんだろう」と思ったことがあれば、そこからが税理士の出番です。お気軽にご相談ください。
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